食のコラムVOL.31「ひな祭りのおはなし」

年中行事と食

 年中行事に因んだおはなしは今月も続きます。日本の年中行事には自然風土と食の関わりが深い国だなぁと改めて考えながら書いていますが、日本古来の季節のならわしの時に食べられるものが行事食となり、今日まで受け継がれているというのはなかなか感慨深いもの。ひとつひとつに意味のある行事食。そして今月は「ひな祭り」のおはなしです。

3月は「上巳の節句」

 3月は五節句のひとつ「上巳の節句」いわゆる「桃の節句」がありますね。3月3日にはお雛様を飾り、ちらし寿司を食べながらお祝いした経験のある方も多いのでは。古くは季節の節目に入ってくる厄払いとして人型の紙人形を川に流すことから始まりました。時代を経て江戸時代にはひな人形と段飾りができ、この頃から「ひな祭り」と呼ばれるようになったとか。ではなぜ「桃の節句」なのか?春の咲く桃には災いや邪気を払う力があるからなのだそう。可愛らしいピンクの桃の花にそんな力があるのですね。

ひな祭りにはちらし寿司

 ではひな祭りにちらし寿司を食べるようになったのはなぜでしょう。諸説ありますが、ちらし寿司は春色で華やかなこと、具材には赤色が魔除けにもなり長生きの願いを込められた海老、先を見通せる蓮根、マメに働く豆という縁起物が使われていること、そして「寿司」という漢字が「寿を司る」、これも縁起が良いということで桃の節句の行事食になったそうです。ちなみにちらし寿司の発祥は岡山県。倹約家だった当時の藩主が一汁一菜令を出したことに反発した人々がたくさんの具材を入れた混ぜご飯を一菜にした、これがちらし寿司の由来とされています。今年のひな祭りには桃の花を飾り、ちらし寿司でお祝いしてみませんか?    おはなし 一瀬美絵