食のコラムVOL.26「札幌黄」

9月は収穫の秋

収穫の秋、味覚の秋、そして食欲の秋。夏から秋にかけて北海道産の農作物が多く出回りますが、やはり地場で生産されたものをいただくのは体が喜びますね。北海道で9月に収穫されるものといえばじゃがいも、たまねぎ、にんじん、果物ではぶどうにメロン、プルーン等々が最盛期を迎えます。その中で今回はこの時期旬の札幌の伝統野菜「札幌黄」をご紹介します。

伝統野菜「札幌黄」

東区の札幌村郷土資料館の敷地内に“玉葱発祥の地”とされる場所がありますが、札幌がまだ札幌村と呼ばれていた明治初期からたまねぎの栽培が開始されました。つまりこれが札幌黄の始まり。そしてこの栽培は日本のたまねぎの先駆けともなりました。札幌黄の原種は「イエロー・グローブ・ダンバース」というアメリカ産の品種。昭和40年代までは主力品種であったものの、保存がきかない上に病気に弱く、大きさも不揃い。それに対し形が揃い、貯蔵性にも優れる現在主流のF1品種が誕生したことから生産が減り、一時は「幻のたまねぎ」となってしまいましたが、F1品種にはない甘味と軟らかさだけでなく、ビフィズス菌の働きを助けるオリゴ糖も豊富で整腸作用があるなどから魅力が見直され、近年再び生産が増えています。

食文化としての伝統野菜

札幌の伝統野菜は他にもあります。札幌大球、サッポロミドリ(枝豆)、札幌大長ナンバン、札幌白ゴボウ。伝統野菜の定義は「札幌」の地名がつき、市内で栽培されたものであること。札幌の気候風土に合うように育てられ、守られてきました。「在来種」とも呼ばれる伝統野菜は作る人、食べる人がいてからこそ守られる言わば食文化。まずは9月が旬の札幌黄をぜひ。煮込み料理がオススメですよ!
(おはなし 一瀬美絵)